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平成23年度 U-15女子トップエンデバー開催報告

2011年10月17日

「人と合わせる」をテーマに、
平成23年度U-15女子トップエンデバー開講!

 10月8日から3日間、味の素ナショナルトレーニングセンターにて、平成23年度U-15女子トップエンデバーが開催されました。参加したのは全国の9ブロックから選ばれた30人の女子中学生たち。昨年度のU-15女子トップエンデバーを経験した選手、今年の9月におこなわれたU-14女子トップエンデバーから続けて選ばれた選手、そして全国レベルの合宿に初めて参加する選手。さまざまな背景・個性を併せ持ちながら、しかしどの選手も自分の通う中学校でしっかりと基礎を積み重ねてきた、文字どおり全国トップクラスの選手たちが一同に会するトップエンデバーとなりました。

 エンデバー制度は「個を強くする」ことを目的の1つとしており、そういった意味ではファンダメンタル、つまりは基礎の徹底が主眼となるわけだが、今年度のU-15女子トップエンデバーのテーマは「人と合わせる」。言葉だけを見れば、個というよりは組織的なイメージを持たれるかもしれない。

 そのテーマのねらいについて鷲野鋭久コーチは次のように述べている。「昨年度からU-14トップエンデバーが始まり、今回選ばれた選手たちはそのU-14トップエンデバーや、地方ブロックで開催しているU-13ブロックエンデバーでファンダメンタルの徹底を経験しているので、個人のスキル、考え方は浸透しています。そこで同じファンダメンタルでもバスケットにおいて重要な『人と合わせるファンダメンタル』を身につけていくために、すぐにはできないけれど、『人と合わせるためにはこういう考え方もある』とU-15トップエンデバーで伝えていければ、次の強化にもつながると考えたのです」。つまり、個々のファンダメンタルはU-14以下で行うこととし、U-15では、もちろんそういった個の育成を継続しつつも、もっと広い視野で見た、チーム内で生き・生かされる「個」を育成しようとしているのである。

 U-14女子トップエンデバーにも参加した六ヶ所希望選手(宮崎県・都城市立五日市中学校 2年)は、「U-14トップエンデバーのときとは違って、先輩方のパワーが強くて、しかも自分よりも身長の高い人がいっぱいいたので(個人としても)勉強になりました。また普段、自分の中学校でやっているバスケットボールとは考え方も違うし、こんなにも(バスケットボールは)考えないといけないんだなと思いました」とこう感想を述べました。

状況を判断し、次の行動をすばやく決断する。
日本のオリジナルバスケットボールの一端に触れる。

 今年度のU-15女子トップエンデバー最大のトピックスは、育成部副部長であり、エンデバー制度の生みの親・原田茂氏が選手たちに指導をおこなったことである。

 原田氏に指導を依頼したねらいについて、鷲野コーチはこう述べている。「原点です。エンデバーを作られた原田先生が求めてきている部分に、われわれコーチングスタッフももう1度立ち返って、大事にしていかなければいけないところ、つまり強化ばかりを叫ぶのではなく、育成があってこその強化ということを確認したいと考えたわけです。そうすることによって、さらなる底辺の拡大ができるのではないかと考えたからです」。それはコーチングスタッフだけが恩恵を受けるものではない。原田氏が直接指導に当たったことで、例年にないほど練習は実践的で濃密、より細かなところまで追求されるものになった。先程の六ケ所選手の「こんなにも考えないといけないのか」というコメントもまさにそのことを示している。

 チームとして決められた動きはあるが、その形にとらわれることなく、状況をしっかりと見極め、次の行動を起こす。そして誰かがアクションを起こせば、それに対して他の4人も連動して次の行動を選択する。「何をしてもいいけど、考えてプレイしないといけない。自分勝手なプレイはダメです。そして形で動くのではなく、仲間がどこで何をしたいのかを考えて、しっかりと観て、自分が次に何をすべきかを判断することが大事です」。これを原田氏は練習中に何度も選手たちに説いていた。
 もちろん考えてプレイを選択することに不慣れな選手たちは形にこだわってしまう。その都度、原田氏や鷲野コーチをはじめとしたコーチングスタッフ陣が動きを止めて、根気強く教え込んでいく。それでもその日のうちにできるようにはならなかったが、鷲野コーチは選手たちを集めて「今できなくてもいいんです。今回学んだ考え方もあることを頭の中に入れておくことが大切です」と伝えていた。

 今回のU-15女子トップエンデバーでは、原田氏の言った言葉が強く印象に残る。
 「ある外国人がこんなことを言っています。『日本人の心は“幕の内弁当”だ』と。幕の内弁当は細かく区切られた枠に整然と料理が並べられています。バスケットボールも同じなのです。諸外国のサイズやパワーに対して、日本人は細かいフットワークや予測をした動きが大切になります。幕の内弁当のように、細かく計算された配置につきながら、常に考え、決断していく。それが日本のオリジナルのバスケットボールになるのです」。

 実際に、今回参加した高辻真子選手(愛知県・名古屋市立若水中学校 3年)は、「今までやってきたことのある練習もあったけど、これまではいつ走りだしたらいいのかがわからなかったんです。でも今日やってみて、そのタイミングなどがわかったので、勉強になりました」と感想を述べている。

 少しずつでも「人と合わせる」動きや考え方を理解していくことが、チームメイトとの共通理解につながり、ひいては日本のバスケットボール界を明るいものにする。40名の日本の明るい未来たちが、これまで知らなかった新しい考え方に触れて、平成23年度U-15女子トップエンデバーは3日間の合宿を終えた。

 なお、今回の平成23年度U-15女子トップエンデバーの模様は、フォトギャラリーにて掲載されていますので、是非ご覧ください。