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現地レポート

伝統の継承と創造 RSS

2014年12月24日 19時16分

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必勝不敗――この四文字は周りの人が思っているよりも重たいようだ。

秋田・県立能代工業は、ウインターカップがまだ「春の選抜」だったころも含めて、45回全てに出場している名門校である。その優勝回数、20回もまた男女を通じてトップの数字だ。さらに田臥 勇太選手(現・リンク栃木ブレックス)が在学していたときは、いまだに誰も成し遂げていない高校9冠、つまり3年間負けなしという成績も残している。
そんな県立能代工も近年は思ったような結果を出せていない。チームを率いる佐藤 信長コーチも「昔は強かったと言われるかもしれないが、今の我々はチャレンジャー」と断言し、今夏の南関東インターハイでも初戦敗退という憂き目にあっている。

秋田・県立能代工業④長谷川 暢

秋田・県立能代工業④長谷川 暢

JX-ENEOSウインターカップ2014の初戦、熊本・九州学院戦は【97-74】で快勝した。序盤に見せたフルコートディフェンスからのトランジションバスケットは、往年の県立能代工業を彷彿させるほどの迫力があった。
それでも佐藤コーチは満足していない。
「出だしは良かったが、途中から安心したのか、そこから流れが悪くなってしまった。初戦の難しさを加味しても、自分たちの力が半分出たかどうか…内容としては決して良くない」
その要因として、キャプテンの#4長谷川 暢に矛先が向く。
「今日はキャプテンが冷静さを欠いていた。気合いが入りすぎていたのか、自分をしっかりコントロールできてない。体が熱いのはいいが、頭まで熱くなっているようではダメだ」
コーチの目はいつだって厳しい。

それは一方で、コーチがキャプテンに求めるものの高さにもよるのだろう。佐藤コーチは厳しい言葉を発したあとに、こうフォローもしている。
「能代のキャプテンとしてプレッシャーもあるのだろう。だが先輩たちはそれを乗り越えてきた。彼にできないはずはない。自分と戦うこともしなければいけないが、そこを乗り越えれば、このチームは必ず強くなる」

「必勝不敗」を背負う長谷川

「必勝不敗」を背負う長谷川

長谷川自身も、自分が焦っては周りに影響を与えることを十分に心得ている。だからチームをまとめるにあたって、「笑顔で楽しくプレイすることを意識している」そうだ。
「コーチは冷静さを欠いていたと言っていた」と伝えると、笑みを浮かべながら、
「そうなんです。自分では、慣れないフェイスガードやダブルチームをされたけど、焦っているつもりはなかったんです。でも佐藤コーチからはそう指摘されて、何でかなと。今日は自分ばかり注意されましたが、一番大事なのはチームが勝つことなので、それくらいの犠牲にはなります」
と囲んだ報道陣を笑わせていた。
伝統を受け継ぐ厳しさの中にこうした笑いが生まれるあたり、県立能代工業に少しずつ…少しずつかもしれないが、余裕が生まれてきているのかもしれない。

長谷川は続ける。

「能代への入学を決めたのは、日本一を目指すためです。だからウインターカップでもそこを目指しています。でも僕たちはまだ伝統を作っていません。一つひとつ大事に戦って、まずはメインコートに立てるように戦っていきます」

伝統を継承しつつ、新しい伝統を創造する。困難な道ではあるが、それができるのは県立能代工業が伝統校であるがゆえだ。長谷川が笑顔でチームをメインコートに導くことができるか。明日以降の戦いも楽しみである。

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