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現地レポート

つながる”Rising Tide” RSS

2014年12月25日 23時08分

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ピンチは突然やってくる。
第4ピリオド残り8分7秒、山口・県立豊浦のエース、#14中村功平が5つ目のファウルを犯し、退場してしまったのだ。得点は【52-48】。まだ4点リードをしているとはいえ、前半が終わった時点であった15点のリードは、ほぼなくなっていた。
そのまま県立豊浦が意気消沈し、東京・京北が勢いに乗れば、間違いなく逆転される。そうなってもおかしくない流れであった。
しかしそうはならなかった。県立豊浦が土俵際で踏みとどまり、【64-57】で京北を破ったのである。3回戦進出である。

中村、石井と中学から共に過ごしてきた山口・県立豊浦⑫佐々木 隆成の28得点も大きかった

中村、石井と中学から共に過ごしてきた山口・県立豊浦⑫佐々木 隆成の28得点も大きかった

中村と中学時代からともに過ごしてきた#13石井 悠太が言う。
「正直なところ、中村が退場したときは、少し不安がありました。でもそこで不安になっても意味がないし、僕たちはどこよりも練習をしてきたという思いもあります。中村を次のゲームに出させるためにも、声を出してチームをまとめていこうと思いました」
その気持ちの強さは、むろん石井自身の性分にもよるが、一方でメンタルトレーニングの効果でもある。県立豊浦はインターハイ前と、このウインターカップ前に各3回ほどメンタルトレーニングを受けていたのだ。石井は言う。
「1・2年のころに今日と同じ状況になれば、動揺していたと思います。チームをまとめることができたかどうかもわかりません。でもメンタルトレーニングを受けたおかげで、チームをまとめる声が出せたんだと思います」
それはチームを率いる枝折 康孝コーチも認めるところだ。だが、枝折コーチの目は石井とは異なるところに向けられる。
「中村が退場したとき、ベンチも暗い顔をしなかった。それが良かったんだと思います」

崩れてもおかしくない場面で崩れなかったのは、彼らがつながっていたからだ。それはメンタルだけのつながりではない。プレイでも彼らはつながりを見せていた。枝折コーチが言う。
「彼らは一人でもプレイをやりきれる力があるんですけど、ダメなときは孤立してしまうんです。だからパスをさばくことを強調してきました。それが2対2でも3対3でも構わないと、私は思っています。ただ1対1や、1対5になってはいけない。そういう意味でも今日は最後まで『線でつなぐ』バスケットができたと思います。得点こそ少ないですけど、#9清辻 款也や#15高橋 潤地らもよくハイポストでつないでくれましたから」
メンタルも、パス回しも、“つながり”こそが県立豊浦の強みというわけだ。

つながる力で勝利を得た県立豊浦。

つながる力で勝利を得た県立豊浦。

3回戦の相手は香川・尽誠学園である。同じように選手の特性を見極め、チーム全員で戦ってくるチームだ。
「新チームになりたてのころ、一度だけ10分ゲームを2本やったことがあります。そのときはウチが5点勝ちましたけど、今回はわかりません。あのときより精度の高いチームを作ってきていますし、選手たちには『気持ちで負けまぁやぁ』と伝えたいと思います」
枝折コーチの言う「気持ちで負けまぁやぁ」とは、「気持ちで負けないようにしよう」という方言である。同じようなチームが対戦するとき、気持ちが勝敗を分けることもあるからだ。

県立豊浦のセカンダリーの背中に書かれている「Rising Tide」とは「上げ潮」のこと。広辞苑によれば「比喩的に物事が上向きに向かう動き。盛んになっていく勢い」である。気持ちを上向きにしてつながることができれば、メインコートも十分見えてくる。

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